- 「処方箋がなくても買える医療用医薬品って、どんな薬?」
- 「零売制度の仕組みや安全性が知りたい」
- 「市販薬との違いを正しく理解したい」
そんな疑問を持つ方に向けて、この記事では処方箋医薬品以外の医療用医薬品の制度と対象品目をわかりやすく解説します。
医療用医薬品の分類から、零売制度の背景、約7,000品目の構成までを体系的に整理。
薬機法に基づいた安全な利用のポイントを理解することで、薬剤師のサポートのもと安心して活用できる知識が身につきます。
監修:ESSENCE薬局(エッセンス薬局) 管理薬剤師
武蔵小杉のESSENCE薬局に所属する薬剤師。処方箋調剤を中心に、服薬指導、お薬の飲み方・副作用・飲み合わせの相談、市販薬の選び方の相談、医療用医薬品の適正使用支援に従事しています。症状が強い場合や長引く場合は、医療機関の受診をご案内しています。
本記事はESSENCE薬局編集部が作成し、当薬局の管理薬剤師が内容を確認したうえで公開しています。
本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、医師・薬剤師にご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。
医療用医薬品の分類|処方箋医薬品とそれ以外の違い

医薬品は、一般的に「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC医薬品)」に分類されます。
このうち医療用医薬品は、医師や薬剤師などの専門家が関与して使用されることを前提とした薬です。
さらに医療用医薬品は、法律上「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に区分されています。
「処方箋医薬品」は、医師の診察や処方箋がなければ交付できません。具体的には抗生物質、降圧剤、睡眠薬などが該当します。
一方で、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」は、医師の処方がなくても薬剤師の判断と対面販売によって購入できる医薬品を指します。
ただし、この販売は誰でも自由に行えるわけではなく、薬機法(医薬品医療機器等法)に基づき、一定の条件を満たした薬局でのみ認められています。
薬機法では、医薬品の区分を明確にすることで、医療安全を確保しています。
このため、医療用医薬品の中でも「医師の診療がなくても販売可能」とされるのはごく一部であり、その取り扱いには厳格な管理と薬剤師の職能が求められます。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品が販売できる理由と制度の背景
「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」が販売できる背景には、厚生労働省の通知(薬食発)による制度上の整理があります。
この通知により、一定条件を満たす医療用医薬品については、医師の診断がなくても薬剤師による販売が可能となっています。
この仕組みを一般的に「零売(れいばい)」と呼びます。
医療を補完するセルフメディケーション
零売は、「医療を補完するセルフメディケーションの支援」として位置づけられています。
病院を受診する時間が取れない人や、過去に同じ症状で医薬品を使用した経験がある人が、薬剤師の対面ヒアリングを通じて医療用医薬品を再度購入できる制度です。
ただし、販売にはいくつかの条件があります。
- 販売できるのは薬剤師に限られること
- 販売量は必要最小限であること
- 薬剤師が症状・既往歴・副作用歴を確認したうえで判断すること
- 服薬指導および販売記録の管理が行われること
これらの条件は、患者の安全性を確保するための重要な枠組みです。
また、零売は「保険診療の代替」ではなく、「例外的に自費で購入できる仕組み」である点に注意が必要です。
厚生労働省は通知の中で、「必要最小限の販売」「薬剤師による適正使用の確保」を明確に求めています。
そのため、販売が認められている医薬品であっても、症状が重い場合や自己判断が危険とされるケースでは、薬剤師が購入を断り、医療機関の受診を勧めることもあります。
零売対象となる約7,000品目の構成と主な薬の種類

現在、零売対象となる「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」は、およそ7,000品目にのぼるとされています。(2020年時点)
これらは、医療用医薬品の中でも比較的安全性が高く、短期間の服用で効果が期待できる薬が中心です。
薬効系統別・代表成分と用途
| 薬効系統 | 代表成分・例 | 主な用途・症状の目安 | 販売上の留意点 |
|---|---|---|---|
| 抗アレルギー薬 | フェキソフェナジン(例:アレグラ) | アレルギー性鼻炎の鼻水・くしゃみ・鼻づまり など | 対面販売が原則。薬剤師のカウンセリングを受け、通販ではなく店舗へ。 |
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン(例:カロナール)、ロキソプロフェン(例:ロキソニン) | 発熱、頭痛、月経痛、関節痛など一時的な痛み | 対面販売が原則。保険適用外での購入である。 |
| 胃腸薬 | レバミピド(例:ムコスタ) | 胃炎・胃部不快感など消化器症状の緩和 | 対面販売が原則。 |
| 整腸剤 | 乳酸菌製剤(例:ビオフェルミンR) | 下痢・便通異常、腸内環境の乱れ | 対面販売が原則。 |
| 外用薬・湿布薬 | ヘパリン類似物質(例:ヒルドイド)、ベタメタゾン+ゲンタマイシン(例:リンデロンVG)、医療用湿布(貼付剤) | 皮膚の乾燥・炎症、外傷の炎症、筋・関節の痛み | 対面販売が原則。対面で適応部位や使用期間の相談を。 |
ただし、毒薬・劇薬・麻薬・向精神薬・注射薬などは零売の対象外です。
これらは医師の診療や処方が必須であり、薬局での販売は原則禁止されています。
また、零売対象薬の中でも、薬剤師が症状を確認した結果「医師の診察が望ましい」と判断する場合は販売されません。
これは、制度上の安全弁として非常に重要なプロセスです。
つまり、零売制度はあくまで「医療の代替」ではなく、「医療アクセスが難しい場合の補完的な制度」と位置づけられているのです。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品を利用する際の注意点
処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、医師の処方がなくても購入できる便利さがありますが、同時に注意すべき制限やリスクも存在します。
特に、使用判断や服用方法を誤ると副作用や症状の悪化を招く可能性があるため、薬剤師の指導を正確に守ることが重要です。
医師の診察が必要なケースとの見極め
零売で対応できるのは、あくまで「軽度の症状」や「再発時の短期的な使用」が前提です。
次のようなケースでは、必ず医療機関の受診が必要とされます。
- 症状が急激に悪化している、または長期に続いている場合
- 薬の服用によって強い副作用が出た経験がある場合
- 妊娠中・授乳中など、医師の判断が望まれる場合
零売薬局では、薬剤師がヒアリングを行い、これらの状況を確認した上で販売の可否を判断します。
このプロセスは、薬機法や厚生労働省通知で義務づけられており、利用者の安全性を第一に考える仕組みとして運用されています。
副作用・相互作用のリスク
医療用医薬品には、一般用医薬品(OTC薬)に比べて有効成分が高濃度で含まれているものもあります。
そのため、他の薬との併用や、基礎疾患との組み合わせによって副作用が起こるリスクが高まります。
薬剤師は購入時に、他の服用薬やサプリメント、アレルギー歴を確認し、相互作用を避けるよう指導します。
利用者側も、過去に使用した薬や体質などの情報を正確に伝えることが求められます。
販売時の説明義務と購入者の理解責任
処方箋医薬品以外の医療用医薬品を販売する際、薬剤師には販売目的・使用法・副作用の説明義務があります。
この説明を受けたうえで、購入者自身が内容を理解し、適正に使用することが前提です。
零売は「自己判断で好きな薬を買う」制度ではなく、「薬剤師との対話を通じて安全な薬選びを行う仕組み」であることを理解しておきましょう。
法制度の改正動向
近年では、「緊急避妊薬」や「スイッチOTC化(医療用から一般用への転換)」の議論が進んでおり、医療用医薬品の販売制度全体が見直しの段階にあります。
特に緊急避妊薬の取り扱いについては、厚生労働省が段階的な販売拡大を検討しており、将来的には零売薬局でも販売可能になる可能性があります。
ただし、いずれの場合も薬剤師の対面販売と服薬指導が前提とされる見込みです。
このように、制度は「利便性」と「安全性」のバランスを取りながら発展しています。
そのため、利用者としては最新の制度変更や販売条件を確認し、誤った認識で利用しないことが重要です。
まとめ|制度を理解し、安全に医薬品を活用するために
処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、医師の診断を経ずに購入できる例外的な医薬品です。
制度の目的は、医療機関へのアクセスが難しい人でも、薬剤師の管理下で安全に医薬品を利用できる環境を整えることにあります。
一方で、これらの医薬品は保険適用外で全額自己負担となり、また使用には薬剤師の判断が伴います。
制度の背景には、患者の利便性と医療安全の両立という課題があり、薬剤師はそのバランスを取る役割を担っています。
零売薬局を利用する際は、次の3点を意識しましょう。
- 薬剤師のヒアリングに正確に答えること
- 服薬指導を守り、異常を感じたらすぐに相談すること
- 繰り返し症状が出る場合は、必ず医療機関を受診すること
この制度を正しく理解すれば、医療機関の受診が難しい状況でも、適切なセルフメディケーションが可能になります。
ただし、薬の選択や使用判断は常に専門家のサポートが必要です。
零売は医療を代替するものではなく、補完する仕組みであることを忘れないようにしましょう。
【2025年5月の薬機法改正について】
2025年5月に薬機法(医薬品医療機器等法)が改正・公布され、処方箋なしでの医療用医薬品の販売(零売)は原則として禁止されることになりました。この規定の施行は公布から2年以内(2027年5月まで)とされており、2026年8月時点では施行日は確定していません。
施行後は、医師から処方された薬が手元になく診療も受けられない、一般用医薬品では代用できないといった、やむを得ない事情がある場合に限り、薬剤師の判断のもとで販売が認められる見込みです。
本記事の内容は改正前の運用を前提としている場合があります。最新の取り扱いについてはESSENCE薬局へお問い合わせください。

